今年は、各地で『くるみ割り人形』が無事上演され、冬の風物詩が舞い戻ってきましたね
『くるみ割り人形』と言えば、チャイコフスキーとマリウス・プティパ
今回はプティパの人生をまとめました
フランス生まれの彼が、ロシアに渡る前までの人生~前編~を見ていきたいと思います!
ざっくり年表
1818年 マルセイユにて誕生 → 生後すぐにブリュッセルへ
1831年 父構成のバレエに出演、初舞台を踏む
以後、各地で巡業
1843年~1846年 スペインに滞在
1847年 サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場にてダンサー兼バレエマスターとして契約
1862年 『ファラオの娘』大成功
1869年 首席バレエマスターに就任 「ドン・キホーテ」振付
以後、多くの作品の台本、振付を世に出す
1903年 退任 クルミアにて引退生活
1910年 92歳で死去
舞台一家の次男として誕生
お父様は主役ダンサーでありメートル・ド・バレエ (バレエ団の責任者であり、かつ首席振付家と芸術監督を兼ねる役職 wikipediaより )
お母様は女優という舞台人の両親のもとに生まれたプティパ
当時は芸能の仕事は子どもが継いでいくことが普通であったため、プティパにとって、父の舞踊教室でバレエ学ぶことは必至だったそうです
父はバレエの神髄を私の頭に叩きこむため、肩を弓で殴りつけて何本もへし折った。(中略)
小さいなりにものを考えていた私にしてみれば、ポーズをとって人前でしなをつくるなんて一人前の男のすることじゃない、と思われたのだった
『マリウス・プティパ自伝』より
初めて舞台に立ったのも、お父様が構成された作品でした
革命運動の影響で一家の経済状態が悪くなった際は、家族のみでバレエ公演を行ったこともあったそうです
また、音譜を書き写す仕事を手伝うなど、幼い頃からバレエや音楽に囲まれて育ちました
各地を巡業
16歳になり、プティパも家族以外のバレエ団で働き始めます
しかし、劇団経営者と金銭的なことで揉めたり、騙されたりと苦労をしたそうです
そのような中、スペインでは良い条件の下でマドリッドの王立劇場に招かれました
スペインでのハプニングその1~接吻事件~
しかし、スペインでプティパは2つの事件を起こしてしまいます
スペインにも土地の人間がけっして破ろうとしない習慣やならわしというものがある。
しかし禁断の果実ほど甘いものはないとうことは、だれもが知っているとおりだ。(中略)
そうした若さゆえの武勇談のうち、いまでも覚えている事件がふたつある。
その二番目は、かなり高くついたのだったが。
『マリウス・プティパ自伝』より
一つ目は、接吻事件
当時、舞台上で男優が女優に接吻をすることは固く禁じられていました
特に国民舞踊であるフラメンコではそうでしたが、プティパは見事に破ってしまいました
一度袖に戻ると、マドリッド警察の署長が待ち受けており、きつく叱責されてしまいました
しかし、アンコールの声で舞台に戻ると、次はなんと先ほどの二倍の回数の接吻をして会場を沸かせたのです
怒り狂い舞台に駆け寄ってくる警察署長を、宮廷大臣でもある劇場支配人がなんとかなだめることで事はおさまりました
スペインでのハプニングその2~決闘事件~
プライベートで美しい娘と恋に堕ちたプティパは、度々彼女の家のバルコニーからよじ登り、夜中会いに行っていました
しかし、その彼女はフランス大使の第一秘書である侯爵の恋人の娘でした
ある晩、バルコニーをよじ登ろうとしたところを待ち伏せされ、襲い掛かられたプティパは、そのやりかたを非難し決闘を挑みます
結果、プティパは、弾丸で侯爵の下顎の骨を砕いてしまいました
決闘が禁止されていたこともあり、すぐに警察に出頭を命ぜられました
好意を持ってくれている警官の忠告に従い、すべて「ノー」で答えることで裁判を受けることはありませんでしたが、この事件により祖国フランスへ帰らなければならなくなりました
スペインという国、スペイン舞踊への情熱
このような経緯があり、スペインを離れることになったプティパですが、『カルメン』『ドン・キホーテ』にもみられるように、スペイン舞踊にはすっかり魅了され、研究を続けました
スペイン人に関しては”惜しみなく太陽の降り注ぐこの土地に生まれ育った情熱あふれる人々”と表現しています
まとめ
偉大な功績を残し、厳格なイメージのあったプティパ
この自伝は、親戚の武勇伝を聞いているような人間味あふれる内容で、楽しみながら読み進めていくことができました
警察があえて取り逃がした経緯からも、憎めない、愛される人柄だったことがうかがえます
このように、人生の前半は各地を転々とし、時には冒険もしながらの人生だったようです
破天荒なバジルのキャラクターと、プティパのイメージが重なって見えてきます
こうした若い頃の冒険が、彩り豊かなバレエ作品につながっているのですね
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