はじめに
1936年5月2日、プロコフィエフの『ピーターと狼』が初演されました
1995年にはマシュー・ハートが英国ロイヤル・バレエ学校の生徒たちのためにバレエの振り付けを行い、今も愛される作品となっています
社会情勢に翻弄されたプロコフィエフの人生の中で、一番幸せで希望に満ちていた時に作られたこの作品を一緒に見ていきましょう♡
作曲の背景
1935年の夏、プロコフィエフ一家はモスクワの中央子供劇場に何度も足を運び、演目を楽しんでいました
その中で、プロコフィエフは劇場の全員と仲良くなり、劇場の総裁ナターリア・サーツの依頼により、子供たちのための音楽を作ることにしました
サーツは、外国生活が長くソビエトの現実をよく知らないであろうプロコフィエフに対し、現代の生活よりもおとぎ話か民話で書くように提案したそうです
このアイディアに夢中になったプロコフィエフは、2週間で一気に作曲をしてしまいました
「おとぎ話もいいが、オーケストラを使うのなら、どうだろう、子どもたちに楽器の名前や音色を教えるというのは。それが話の中に組み込まれていれば、子どもたちも喜んで聴くと思うが」
「もちろんです!すばらしいアイディアです!セルゲイ・セルゲーヴィチ」
『プロコフィエフ 音楽はだれのために?』著 ひのまどか
登場人物
お話の登場人物たちは、それぞれのイメージに合った楽器で表現されています
ピーター(弦楽器)
おじいさん(ファゴット)
小鳥(フルート)
あひる(オーボエ)
猫(クラリネット)
オオカミ(ホルン)
狩人(ティンパニ)
あらすじ
ピーターという少年は、牧場のそばに建つ家におじいさんと一緒に住んでいました
ある朝、散歩をしていたピーターが友達の小鳥とおしゃべりをしていると、ピーターの飼っているアヒルがヨチヨチとやってきました
普段は庭の中にいるのですが、ピーターが庭の戸を閉め忘れたために外に出てしまったのです
すると小鳥は「君は僕と同じ鳥なのに、どうしてに飛べないんだ??」とからかいます
一方、池に着き水浴びを始めたアヒルは「あなたは、どうして泳げないの??」と答え、二羽は口喧嘩を始めました
そんな二羽のもとへ、大きな猫がこっそり忍び寄ってきました
「危ない!」ピーターの呼びかけで、小鳥は空へ、アヒルは池の真ん中へと逃げていきました
ちょうどその時、おじいさんがやってきて「どうして一人で勝手に外へ出たんだ?!ここは狼が出るんだぞ!食べられたらどうするんだ!」とピーターを叱り、家へと連れ戻していきました
ピーターは、狼なんて全然怖くない!と平気な顔です
しかし、おじいさんの心配した通り、ピーターが家に入るとすぐに森から灰色の怖い狼が現れます
猫は素早く木の上に駆け上がり、難を逃れますが、逃げ遅れたアヒルは捕まってしまい、一口で丸のみにされてしまいました
まだまだお腹が空いている狼は、小鳥と猫を狙って木の下をうろうろと歩き回っています
それを見ていたピーターはある『作戦』を思いつきました
長いロープを用意すると、塀によじ登りました
小鳥に「狼の頭の上をグルグル飛び回ってくれないかい??」と呼びかけます。
そして、小鳥に食らいつこうと夢中になっている狼のしっぽをロープの輪で引っ掛けると、力いっぱい引っ張りました
狼はびっくりして逃げようとしますが、ピーターはロープの端を結んでいたため、狼が暴れれば暴れるほど結び目はきつく締まっていきます
そこへ、狼を追って森から鉄砲を持った狩人たちがやってきました
ピーターは「狼は僕たちがもう捕まえたから撃たないで!これから動物園に連れてくから手伝ってください」と求めます
ピーターは狩人たちに事情を話し、狼を捕らえてもらいました
そして小鳥を先頭に、ピーター、狼を連れた狩人たち、おじいさんと猫、という行列で、動物園に向けて出発します
丸のみにされたアヒルは狼のお腹の中で、クワックワッと鳴いていました
おわりに
この作品を作る際、プロコフィエフは自身の7歳と12歳の子供たちを思い浮かべながら、飽きさせない工夫を必死に考えたそう
面白くなければすぐに飽きる、頭から教え込もうとしてもダメ、、子どもたちの集中度や好奇心を考えながら作られた作品を、わたしたちも童心にかえって楽しみたいですね♡
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